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名古屋地方裁判所 昭和43年(行ウ)39号 決定 1969年4月26日

申立人

小出陽男

右法定代理人父

小出義一

同母

小出みさを

右申立人(原告)から昭和四三年(行ウ)第三九号贈与税等決定取消請求事件について、被告変更の申立があつたので、当裁判所は、左のとおり決定する。

主文

申立人(原告)の本件訴のうち、名古屋中村税務署長が昭和四二年九月一九日なした昭和三七年、同三八年、同三九年、同四〇年分贈与税の決定および無申告加算税決定の取消請求の被告を名古屋中村税務署長に変更することを許可する。

理由

申立人は、主文同旨の裁判を求め、その理由は「申立人は、名古屋国税局長を被告として昭和四三年(行ウ)第三九号贈与税等決定取消請求事件を提起し現在審理中であるが、右訴訟において、主文掲記の贈与税等の賦課決定処分の取消請求についてまでその被告を名古屋国税局長としたのは、該請求につき被告とすべき者を誤つたものであるから、行政事件訴訟法一五条一項により被告を名古屋中村税務署長に変更することの許可を求める。」というにある。

よつて審按するに、申立人は本件訴状の請求の趣旨において、従前の被告たる名古屋国税局長のなした審査請求棄却の裁決の取消を求めているにとどまらず、主文掲記の贈与税および無申告加算税の賦課決定処分の取消をも訴求しており、かつ、その請求原因においても「原告(申立人)は財産等の贈与をうけたことなく」、「この貯金は幼時より継続貯蓄していた貯金が蓄積したもので、……過去において財産の贈与を受けたことなく贈与をうけた財産を預け入れたものでないから相続税法を適用せられる筋合はない。」等主張しており、これらを総合すれば、申立人は本訴において名古屋国税局長に対する裁決取消の請求に併合して、右裁決に対し原処分の関係にある贈与税等決定の取消をも訴求しているものと理解することができる。

ところで、行政事件訴訟法一一条一項によると、処分取消の訴は原則として処分をした行政庁を被告として提起すべきものとされているところ、申立人が本訴において取消を求めている処分のうち、贈与税および無申告加算税の決定をなした行政庁が名古屋中村税務署長であることは当事者間に争いがないから、右処分については申立人は同署長を被告として本訴を提起すべきであつたのである。そして、官庁組織が複雑化し、行政訴訟の機構もまた著しく精緻となつた現在において、法律の素人たる申立人が右のごとく被告とすべき者を誤つたとしてもこれは已むを得ないことであり、これにつきただちに申立人に故意又は重大な過失ありと断ずるのは相当でない。よつて、本訴のうち主文掲記の賦課決定処分取消を求める部分について被告の変更を許すのが相当であると認め、主文の通り決定する。

昭和四四年四月二四日

(裁判長裁判官 宮本聖司 裁判官 福富昌昭 裁判官 将積良子)

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